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家庭経済の耳より情報

2024年04月10日

自宅不動産活用による老後資金対策

 人生100年時代、物価の上昇が加速していますが、老後の収入の柱である年金受給額は実質的に目減りしています。
このような時代背景の中、高齢者の経済的な不安が増大するのは必然的です。
 一般的に、高齢者は金融資産等が豊富のイメージがありますが、60代の約20%が預金・株・債権等を含む金融資産の保有がない状況です。
しかし、そのような方々でも、幸いにも、自宅不動産を保有している率は非常に高いのです。
 この虎の子の資産である自宅不動産を有効に活用できれば、老後の経済的な不安を大きく減少させることができると思います。
 では、どのようにして活用するのか。

1.自宅不動産活用方法
 自宅不動産活用には大きく分けて以下の二つがあります。
(1) 自宅居住継続
① リースバック
   自宅を業者に売却。同時にその業者から売却した物件を賃借する。
② リバースモーゲージ
   自宅を担保に金融機関から融資を受ける。
(2) 転居
  自宅を売却してダウンサイズした物件を購入、または賃貸物件を借りる。

2.「リースバック」 と 「リバースモーゲージ」
 現時点で、老後資金対策は必要だが自宅居住継続も強く希望する一定数の高齢者にとり、利用しやすい商品は、「リースバック」と「リバースモーゲージ」です。
 しかし、これらの商品の内容を十分理解しないまま利用することで、トラブルになるケースも増えています。
 今日は、2つの商品の注意点を説明しますので、高齢者の方々が、これらの商品を利用する際の参考にしていただき、トラブルに巻き込まれないようにしていただきたいと思います。

(1) リースバック
① 売却価格は通常売却額より安い。
   リースバックの売買価格は、通常の仲介市場で売却できる値段の60~80%程度が多い。
② 借りる賃料は通常の賃料より高い。
   リースバックの賃貸借契約の賃料は、リースバック業者が購入する価格に対しての利回り(6~13%)で賃料を計算する。
  相場の賃料ではないので、相場の賃料より割高となる。
③ 1~3年程度で賃貸借契約が終了する「定期建物賃貸借契約」の契約が多い。
   長く住もうと思っていても、住めない場合が多い。
④ 諸費用が高額な場合も。
   必要以上に高額な諸費用を請求してくる業者もいるので、業者選定が重要です。

(2) リバースモーゲージ
    以下の3大リスクに注意し、その利用を検討する必要があります。
① 不動産市場の下落リスク
   リ・バース60以外のリバースモーゲージ商品は、毎年または定期的に対象不動産の担保評価があり、例えば、当初1,500万円融資を受けたが、3年後の担保評価で1,300万円しか融資できない評価がでた場合、差額の200万円を繰り上返済するよう請求される場合があります。
② 長生きリスク
   長生きは素晴らしいことだが、支払利息を考えると、長生きすることで支払う利息総額がより多くなる可能性があります。
   また、認知症リスクも増大します。
③ 金利上昇リスク
   リバースモーゲージの金利は、原則、各金融機関の基準金利(「店頭金利」ともいう)が適用金利。
   普通の住宅ローン金利が0.4%(変動)前後であるが、リバースモーゲージは、現時点で平均金利約3%(変動)。
   今後、金利上昇が見込まれる中、借入金利を段階的に変動させたシミュレーションを行い、金利上昇時でも返済可能な借入額を決めることが重要です。

「リースバック」、「リバースモーゲージ」とも人気のある商品ではありますが、どのような商品でもメリット・デメリットがあります。
利用者は少なくとも各商品の注意点を十分に認識し、自分のライフプランに合った商品を利用することが重要です。

熊谷 利雄 2024年04月10日