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家庭経済の耳より情報

2021年05月10日

見直そう中古住宅

 空き家の増加が社会問題になって久しいですが、築40年超のマンションは現在の81.4万戸から10年後には約2.4倍の198万戸、20年後には約4.5倍の367万戸 となります。これらは適切な維持管理がなされないと空き家化、スラム化が進むといわれています。
現在住んでいる方の高齢化、独居化も着実に進んでおり、維持管理が困難なマンションが増えています。
戸建て住宅も居住者の高齢化に伴い、施設への入居や利便性の高い地域にあるコンパクト住宅への転居により、空き家化が進んでいます。
 その一方、駅近やベイエリアなどの新築高層マンションは価格が高止まりしていて、簡単に手に入りにくくなっています。

 そんな状況の中、4月からの税制改正で、これまで業界が要望し続けてきた40m2台の住宅がローン控除の対象となりました。いままでは税制優遇措置がなかったため、延べ床面積が40m2台の中古マンションや分譲戸建てはごく僅かでした。
今後、全国の市街地中心部および近郊に建築される、単身者もしくはDINKSを主な対象者だけでなく、高齢者も対象者としたコンパクトタイプの新築物件が注目され、販売戸数が増えることが予想されます。
コロナ社会におけるリモート勤務や、住まい方改革もこれを後押しするでしょう。

 もう一つ注目したいのが、中古住宅です。大手住宅メーカーも中古住宅のリノベーションやリフォームに力を入れています。
国土交通省の「平成28年度住宅市場動向調査」によると分譲一戸建て住宅(建売住宅)の平均は3,810万円、中古一戸建て住宅は2,693万円で1,100万円以上の差があります。リノベーションに1,100万円を掛け、建売住宅と同じ予算を使った場合でも、自分好みの内装や設備を選べる分、満足度は高くなります。また、希望のエリアでなかなか新築物件を探すことは難しい場合がありますが、中古なら見つかる可能性が高くなります。中古住宅の固定資産税評価額は、経年減点補正率といって築年数に応じて減価され一般的には固定資産税も安くなります。

中古住宅の住宅ローン控除の適用条件(国税庁 住宅借入金等特別控除より)

(1) 自ら居住すること
住宅を取得してから6か月以内に入居して、控除を受ける年の12月31日まで居住していることが必要です。居住の実態は住民票により確認します。

(2) 床面積が50m2以上であること
減税対象の住宅の床面積が50m2以上である必要があります。この面積の測定方法は、一般的な広告に掲載される面積とは異なる場合がありますので、必ず不動産登記上の面積で確認してください。
なお、登記簿の面積は、戸建住宅の場合は壁心面積(壁厚の中心からの面積)、マンションの場合は内法面積(壁の内側の面積)になります。中古住宅で床面積40~50m2の場合、令和2年12月から令和3年11月末までの契約である必要があります。

(3) 耐震性能を有していること
中古住宅の場合、築年数によっては1981年6月1日に施行された改正建築基準法を満たしていない場合があります。中古住宅を購入する際に、次のいずれかに適合することが要件となります。
木造なら20年以内に建築された住宅、鉄筋コンクリート造なら25年以内に建築された住宅、耐震基準適合証明書がある住宅、既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)がある住宅、既存住宅売買瑕疵保険に加入していること

(4) 返済期間が10年以上あること
住宅ローンの返済期間が10年以上のローンを利用しなければ、適用できません。

(5) 年収が3,000万円以下であること
合計所得金額が3,000万円以下の年でなければ、住宅ローン減税は適用できません。ここでいう「合計所得金額」とは、給与だけでなく、退職金、株の売買による利益や配当、不動産の譲渡所得などを含みます。

(6) 特定の制度と併用していないこと
居住した年のその前後2年間(通算5年間)に「3,000万円特別控除」や「居住用財産の買い替え特例」を受けていない必要があります。
「床面積40m2以上~50m2未満」への適用拡大では、対象者は合計所得金額1,000万円以下に制限されます。この特例は13年間延長の特例期間に限られます。

リフォームの減税制度との併用に注意
 中古住宅のリフォームに対して所得税の減税を受けることができるのは、バリアフリーや省エネ、同居対応などを目的に一定の要件をクリアした工事に限られます。
中古住宅を購入し、入居後数年してからリフォームをするときは要注意です。耐震目的の工事を除くほとんどの工事では、リフォーム減税と住宅ローン控除との併用が認められていません。耐震改修の投資型減税のみ、住宅ローン控除と同時に利用することができます。
もしリフォーム費用をローンでまかないたい時は、住宅ローンの残債とリフォーム費用を加えた金額を他の金融機関から借り換えするという手法があります。また、住宅ローン控除の適用要件を満たさないリフォームの場合、住宅の購入費用と一緒にしてしまえば控除を受けやすくなります。

 【住宅ローンの年末残高×1%】がその年に控除できる金額です。ただし、住宅の種類等によって控除できる金額に上限があります。年末近くに繰り上げ返済をすると年末残高が減り、控除額も少なくなるので、繰り上げ返済は年明けに行うのが賢明です。
なお、住宅ローン控除制度の見直しでは近年の低金利化で1%を下回る金利適用が増え、「1%か、住宅ローン金利レートのいずれか低い率を控除すべき」という議論が出ていましたが、今回は見送られ、令和4年(2022年)の税制改正で検討されるようです。

大倉 和久 2021年05月10日