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家庭経済の耳より情報

2020年03月25日

AI(人工知能)を活用する住宅ローン選び

 新型コロナウイルス流行の拡大によって経済が大きく下降基調になっており、住宅価格も下がってくることが予想されます。住宅購入を検討していた方には、今が買い時なのかもしれません。
そんな時、私たちの住宅ローン借入に手軽さを提供してくれるAIを使ったツールを紹介します。


■AIが金融機関の住宅ローン事前審査を迅速にします
 住宅ローン借入申込者が提出した事前審査書類を、人間に代わってAIが読み取り、過去に人間が行った審査事例のデータと比較して判定することにより、最適な審査結果を短時間で導き出すことができるようになっています。
人間が行う審査では判定のために最低でも2~3日を要しますが、AIはデータの読み取りさえ行えば、瞬時に結果を出せます。
現在、データ入力は提出された各種書類を金融機関の担当者が手作業でコンピュータに入力している場合が多いですが、地銀の中にはITによる伝票自動化入力と手書き文字を認識する読取装置を使うことで、更に早く結果を出せるようにしている例もあります。
また、みずほ銀行はオンラインでの申請ですが、最短1分で審査結果が出せることを今月発表しました。

 AIはデータを分析して、融資した場合の返済が焦げ付く確率がX%、返済される確率がY%という数値で判定し、融資の可否と融資金額や金利を算出します。融資した結果、AIが下した判定が間違いであった場合に、正しい答えをフィードバックすることで、より精度の高い判定ができるようにAI自身が学習します。
これは人間の赤ん坊が日々行動しながら、何をすると褒められるのか、何をすると叱られるのかを自己学習することによって成長するのと同じようなプロセスなのです。

 このようにAIは自己学習して賢くなりますが、人間の考えよりも賢くなり過ぎると、どうやってその判断結果を導いたのか、その導く過程がどうなっているのか人間にわからないことが問題であると指摘されています。
もし、借入申込者に融資不適という判定結果が出た場合に金融機関の担当者が何故そのような結果になったのか理由を説明することができず、お客様に不満を持たせたままお帰り頂くことになるかもしれないからです。

 現在はAIが導いた結果を担当者が再度検証すると、ほとんどの判定結果が人間とAIとで一致しているそうです。
AIは過去の膨大な審査事例データを学習することにより正しい判断をしますが、事例の少ない条件での案件は正しい判断ができない場合もあり、従来通り人間が審査しています。将来さらにデータが蓄積されれば全ての審査でAIが人間に代わって判断することになるでしょう。


■AIが最適な住宅ローンを選びます
 事前審査の前に、最近はAIが最適なローンを選び出してくれるオンライン型住宅ローンサービス「モゲチェック」という商品も開発されています。5年ほど前に住宅ローンの借り換えのためのシミュレーションサービスとして発表されましたが、最近は新規借り入れにも使えるようになり、昨年から利用者が増えています。

 具体的にはスマホやパソコンを使って職業、年収、現在の住居の様子、居住希望地域など30項目ほどの質問の答えを入力し、借入希望の送信ボタンを押すと即座に借入可能額と金利、変動/固定などの条件が表示されます。私も試してみましたが、あまりの速さに何故この金額が提示されたのか疑問を持ち、年収を変更して入力し直してみたところ、それなりに借入金額も変わりました。

 さらに、提示された借入金額と金利を基に、金融機関が扱う700件ほどの住宅ローンの中から、条件に合った最適なローンを提案するサービスも行っていますので、提案された中から自分に合った銀行やローンを決めて、事前審査を申し込むことができます。


■AIは住宅ローンの不正利用を検知するためにも使われます
 「フラット35」はその用途をマイホーム取得のための利用に限定されていますが、最近は投資用物件取得のために利用する不正が多く発生しています。その理由は不動産投資ローンが住宅ローンに比べて一般的に審査が厳しく、金利も高く設定されているため利回りが低くなるためです。悪徳不動産投資会社は特にマイホームを購入する年代よりやや若い若者層に不動産投資物件を斡旋して、金融機関に対して自分が住むという設定のもとで住宅ローンを組ませて購入させます。居住用なので住民票を移すなど、本人も納得して不正行為に及んでいますが、何も分からない若者が騙されている場合も、不動産投資の熟練者が不正であることを認識して行っている場合もあります。

 ここで活躍するAIは、現在の居住地、勤務地、家族構成、など購入物件との違和感をパターンとして学習して、不正行為を検出して摘発します。住宅金融支援機構では不正が発覚した場合は全額一括返済または物件を競売にかけて売却した上で残額の返還を求めるという手段を取っています。


 説明の中に出てきたように、AIは過去の膨大なデータを学習して、それを基に判断します。そのため過去のデータの特徴、癖などにより判定が異なる結果になることもあります。したがって、最終的には人間が結果を確認して判定することも必要です。
AIの判定結果を参考にして、住宅購入の不安を解消するために、公平中立なFPにご相談いただきますようお願いいたします。

池 俊夫 2020年03月25日