相続を考える

家庭経済の耳より情報

2021年11月25日

暦年贈与がなくなる?

暦年贈与が廃止になる可能性があります。

暦年贈与が廃止になると、今後の相続において大きな影響を及ぼしかねませんので、今回は「暦年贈与廃止の可能性と今後の生前贈与対策」について最新情報をお届けします。

 来年の令和4年税制改正のポイントとして、暦年贈与が強化されるか廃止されるのではないかと懸念されています。
 発端は、令和3年度税制改正大綱において、「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」が盛り込まれたことです。

具体的には、急速に進む高齢化において、現在は若年世代への資産移転が進みにくい状況にありますが、高齢世代の資産をより早い時期に若年世代に移転できれば、経済の活性化が期待できます。そして、その実現のための資産の世代間移転を促進する税制の構築が重要な課題となり、相続税と贈与税をより一体的にとらえた「現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直す本格的な検討」を実施することとなりました。

 本来、贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税」がありますが、「相続時精算課税」は「相続時に贈与財産と相続財産を合算」する制度で使いづらく、現状は圧倒的に「暦年贈与」が利用されています。
 現に平成30年贈与課税件数は、暦年課税分 37万件、相続時精算課税分 4万件と暦年課税の方が圧倒的に高い利用率となっています。(2020年11月13日に開かれた第4回政府税制調査会の資料より)

ご承知のように暦年贈与は、年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかからない制度であるため、有効活用することで相続税を節税することが出来ます。
 (ただし、相続開始前3年以内の贈与は相続税に加算されます)

それでは、将来の税制改正はどのようになるでしょうか?

以下の 2通りが考えられます。
1,暦年贈与税制は廃止
 贈与はすべて相続時精算課税とし、贈与時はすべて非課税もしくはごく少額とし、相続時にすべての贈与を合算し課税する。
2,暦年課税制度を見直し
 相続前の贈与の加算期間を現行の 3年前から 5年前、10年前、15年前に変更する。これによって暦年贈与の利用を制限し、資産の再分配機能を強化する。

では、今後の対応策はどうしたら良いでしょうか?

今はまだ検討段階ですが、令和4年度税制改正には出てくる可能性が高いと思われます。 改正はさかのぼって課税強化することは考えにくいので、子供や孫に、教育的配慮をしながら、今から有利な暦年贈与を検討することが良いと思われます。

そして、その他の生前贈与対策としては以下のことが考えられます。

1.暦年贈与の最終年、または最終年の前年の贈与
 改正内容によっては、税制改正前の最終年又は最終年の前の年の贈与を多めに行う。
2.子供の不動産購入時に一部親名義で購入
 子供の住宅等の一部を親名義にし、親が所有し相続時に移転する。不動産、特に建物は相続時に評価が低いので有益です。
3.住宅資金贈与制度を活用
 子供が住宅を購入する時に住宅資金贈与を活用し非課税枠を活用する。

令和4年度から税制改正となった場合は、令和4年3月31日までの贈与が一つの目安となります。 いつ発生するかわからない相続ですが、対策は早くから始めるに越したことはありません。

土井 健司  2021年11月25日