相続を考える

家庭経済の耳より情報

2020年08月25日

簡単便利に使いやすくなった「自筆証書遺言」

 遺言書には、「自筆証書遺言」・「公正証書遺言」・「秘密証書遺言」の3種類があり、状況や目的に合わせて自分に合った方式を選択することができます。
今までは公証役場に保管され安心できる「公正証書遺言」が主流でした。

それに対し「自筆証書遺言」は、①手軽に書け②秘密保持ができ③料金が掛からない、と云ったメリットがある反面①保管場所や②財産目録等をその都度自筆で書かなければならない面倒くささ、③書き間違えによる執行時のトラブルなどのデメリットがありました。

今回の民法改正で「自筆証書遺言」が大幅に改正され、便利で使いやすくなりました。

その改正ポイントについてご紹介します。

A.自筆証書遺言の方式緩和 
 今までは全文自筆が義務づけられており、書き間違いによるトラブルも多く見受けられました。今回の改正により、変更頻度の高い“財産目録”に限り、①パソコンによる作成が認められ②不動産の登記事項証明書や通帳のコピーも添付が出来るようになりました。また③遺言者以外の人(第3者)による代筆も可能となりました。
“財産目録”以外の部分の自筆作成は変わりませんので、ご注意下さい。すべてがパソコン作成になったわけではありません。また必ず①日付②名前③押印は忘れないようにしてください。上記の点を守らないと折角書いた遺言書が“無効”になることもあります。

B.自筆証書遺言の保管制度の創設              
 今回の改正で、「自筆証書遺言」を遺言書保管所として指定された法務局(全国312カ所)で遺言の保管申請を行うことができるようになりました。(2020年7月10日施行)保存方法は,申請が許可された遺言書について磁気ディスク等に保存されます。これにより今まで書いた遺言書を生前に家族の目に触れにくい場所に保管したため、死後も(遺言書の存在を)気づかれないままになってしまったと云った様なことは解消されます。相続人の手続きは、遺言者の死後遺言書保管官に対して、遺言書情報証明書(遺言書保管ファイルに記載された事項を証明するもの)の交付請求可能となります。また法務局に保管された自筆証書遺言は、「公正証書遺言」と同じく検認手続は不要になります。

 肝心の保管費用について、「公正証書遺言」と比較してみましょう。
「公正証書遺言」の場合、相続されるまたは遺贈する財産によって異なります。作成手数料は、5,000万円超、1億円以下で43,000円,3億円で95,000円になります。更に証人を2名以上付かなければならず、1人当たり1~2万円掛かります。
法務局に保管される「自筆証書遺言」の保管料は、3,900円です。

 保管を取りやめる場合は、遺言書を保管している法務局に本人自ら出頭して保管を取りやめる「撤回書」を提出すれば、いつもで取りやめることができます。
尚、撤回費用は無料となっています。

 具体的な手続としましては、自筆証書遺言を法務局に本人自らが出頭、持参し、法務局で厳格な本人確認をされたうえで遺言書の原本を保管してもらいます。
但し、代理人は不可ですのでご注意下さい。

 申請ができる法務局(管轄)は、次のようになっています。
Ⅰ.遺言者の住所地を管轄する法務局
Ⅱ.遺言者の本籍地を管轄する法務局
Ⅲ.遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
*既に遺言書を法務局に保管していて、追加で遺言書を保管する場合は、既に遺言書を保管している法務局となります。

 死亡している特定の者について、請求者が相続人、受遺者等となっている遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面の交付を請求することができます。これを『遺言書保管事実証明書』と云います。尚、遺言書情報証明書の交付請求は1通1,400円、遺言書保管事実証明書の交付請求は1通800円となっています。

 遺言者の相続人、受遺者等は、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます。
遺言書保管官は、遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人、受遺者及び遺言執行者に通知します。遺言書の閲覧の請求は、原本の場合1回につき1,700円、モニター(どこの遺言書保管所でも閲覧可能)ですと1回につき1,400円となっています。

 残された大切な遺族が『争族(争う家族)』とならないようにするため、遺言書を書き遺すことは必須です。簡単便利になった「自筆証書遺言」を是非御利用下さい。
但し、注意事項が1つあります。法務局で遺言書の書き方などを相談することはできませんので、遺言書の作成自体は自己責任となります。特に「自筆証書遺言」では「方式緩和」で示したいくつかのルールがありますので、作成される際は、専門家に事前に確認されるか、もしくはご自身で必ずご確認下さい。取り返しの付かないことになります。

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滝田 知一 2020年08月25日