相続を考える

家庭経済の耳より情報

2013年12月20日

保険を使って、賢く相続税対策に備えよう

 相続税の基礎控除改正の適用は平成27年1月1日からとなりました。今まで相続税など我が家には関係ないと思っている方にも、影響が出るかもしれません。

今までの非課税枠は、5000万円+(1000万円✕法定相続人)ということでしたが、
今後は、3000万円+(600万円✕法定相続人)となり、今までの4割控除額が減額されることになりました。

たとえば、妻と子ども2人の場合の基礎控除額は8000万円から4800万円になってしまいます。
基礎控除とは、相続税の対象になる相続財産から引ける金額のことですので、相続財産の評価額として計算する金額が多くなってしまい、相続税を払う対象者が増えるということになります。

 相続財産とは、亡くなった人(被相続人)の名義の預貯金や株などの金融資産のほか、土地、建物も含まれます。
都市部では土地の評価額が高いので、小規模宅地の特例(前々回のコラムに詳細がのっています)が適用にならず、相続税の対象になる可能性が出てくるかもしれません。
試算によると、これまでの対象者は約4%程度でしたが、6%ぐらいに増加するとのことです(全国レベルでなく、都市部に限ると住宅の評価額が高いため、18~19%くらいと試算している税理士法人もあります)。

団塊の世代の方の親世代は現在80歳から100歳くらいであることを考えると、相続税対策は早めに準備しておくことが重要です。
団塊の世代の方は兄弟も多く、それだけに相続となった場合、兄弟でもめたり、いがみ合ったりすることが残念ながら多いようです。「相続」が「争族」とならないようにしたいものです。

 相続税対策の一つとして、保険の活用があります。
相続税の対象となる相続財産の評価額を下げる節税対策と、納税資金を準備するための対策についてご説明します。

契約者、被保険者が被相続人で、保険金の受け取り人が法定相続人の場合、保険金として受け取ったお金は相続財産の評価には含まれますが、非課税枠「500万円✕法定相続人の数」として控除できますので、相続税対策として多く活用されています。
ここで受け取った保険金を納税資金として使えば、これも有効な準備となります。
ただし、高齢の方や病気のある方は保険に加入できませんので、早めに考えておかないと間に合いません。

次に被相続人が被保険者とならない保険活用で、預貯金などの金融資産をなるべく生前に、被相続人の名義から将来相続を受ける人に移しておくという、相続税対策について説明します。暦年贈与という仕組みを使って、保険を活用する方法です。
一般的には1年間に110万円までは子どもや、孫、妻などに贈与しても、贈与税はかかりませんが、毎年毎年定期的に保険料を親が支払っていた場合、生前贈与と認められない場合もありますので、暦年贈与(毎年同じように一定金額を贈与する方法)には気をつける点があります。

たとえば妻、または子を契約者、被保険者にし、受け取り人を子または妻にし、保険の種類は終身保険などの貯蓄機能のあるものを選び加入します。
保険料は被相続人が現金で子または妻の口座に振り込み、子または妻の口座(契約者)から引き落とします(贈与という形で保険料負担をします)。
この保険は貯蓄機能がありますので途中解約すると、解約返戻金が出てきます、解約返戻金は基本的に契約者の物ですので、この金額は被相続人の財産から相続人に移ったことになり、将来の相続財産を減らすことになります

生前贈与として保険活用をするための前提として以下のことがあります。
1.毎年贈与契約書を作成する。
(最初から今後何年分かの保険料を払うというような契約でまとめると、一括贈与となります)
2.親が子どもの預金口座に現金を振り込み、保険料は子どもの口座から引き落とす。
3.子どもの通帳については、親が管理せず子どもにきちんと渡しておく。
4.支払った保険料について、親が生命保険料控除を利用しない。

何気なく加入している保険契約ですが、契約者、被保険者、受け取り人が誰になっているかで、将来受けとる保険金に税金がかかってきます。
契約者とは基本的に保険料を支払う人、被保険者は保険事故の対象者、受け取り人は保険金を受け取る人です。

契約者  被保険者  受取人  かかる税金の種類
夫    夫     妻    相続税
夫    妻     夫    所得税
夫    妻     子    贈与税
夫    子     夫    所得税
妻    妻     夫    相続税       

これは1例ですが、保険を相続税対策として活用する方法は他にもいくつか考えられます。それぞれの家庭により対策は変わってきますので、専門家にご相談ください。

 実際の事例で多く相談されるのが、相続財産が不動産のケースです。
相続税の納付は現金が原則です。相続開始から10ヶ月以内となっていますので、不動産の売却がうまくいかない場合は、資金の工面が難しくなります。不動産が住居の場合はさらに大変です。いざとなったときに困らないためにも早めに対策を立てることをお勧めします。

佐藤 房子 2013年12月20日