2026年07月10日
相続手続きで意外と忘れがちな「デジタル遺産」
相続というと、不動産や預貯金、有価証券などを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし近年、相続手続きで問題になるケースが増えているのが「デジタル遺産」です。
デジタル遺産とは、パソコンやスマートフォンの中に保存された情報やインターネット上で管理されている財産・契約・アカウントなどを指します。
スマートフォンひとつで銀行取引や証券投資、買い物、各種契約を行う時代となり、ご本人しか把握していない資産や契約が増えています。その代表例が、スマートフォンやネット銀行、ネット証券、サブスク契約、SNSアカウントなどです。そのため、相続が発生した際に家族が存在に気付かず、財産を見落としたり、不要な費用を払い続けたりするケースも少なくありません。
このように、デジタル遺産には財産だけでなく、契約や思い出のデータも含まれており、家族が把握していないとさまざまな問題が生じる可能性があります。(図1)
スマートフォンは「デジタル金庫」
スマートフォンは単なる通信機器ではありません。銀行アプリや証券アプリ、電子マネー、クレジットカード、各種会員サイトなど、多くの重要情報が保存されています。
しかし、家族がパスコードを知らなければ内容を確認できず、相続手続きが進まないことがあります。また、スマートフォンの中にしか保存されていない写真や連絡先などの思い出も失われる可能性があります。
そのため、スマートフォンの保管場所や管理方法について、信頼できる家族に伝えておくことが大切です。
見落としやすいネット銀行・証券口座
近年は店舗を持たないネット銀行やネット証券の利用者が増えています。
ネット銀行には通帳がなく、利用明細もWeb上で確認するケースが一般的です。また、証券口座も電子交付を選択していると紙の書類がほとんど残りません。そのため、家族が口座の存在を知らず、相続財産として把握できないケースがあります。
特に投資信託や株式は資産額が大きくなることもあり、相続財産の漏れは大きな問題につながります。利用している金融機関名や証券会社名を一覧にしておくだけでも、家族の負担を大きく減らすことができます。
サブスク契約は放置すると費用が発生
動画配信サービス、音楽配信サービス、オンラインストレージ、新聞・雑誌の電子版など、毎月定額で利用するサブスクサービスが増えています。
契約者が亡くなった後も、自動更新や自動引き落としが継続される場合があります。月額数百円程度の契約でも、複数利用していれば年間ではまとまった金額になります。利用しているサービスを一覧にし、どのクレジットカードや口座から支払っているのかを整理しておくと安心です。
SNSアカウントの取り扱いにも注意
SNSは直接的な財産ではありませんが、相続後の対応で困ることがあります。亡くなった方のアカウントが残り続けたり、家族がログインできず削除手続きができなかったりするケースもあります。また、SNSには友人・知人との連絡先や大切なメッセージが残されている場合もあります。利用しているSNSの種類を記録しておくことで、必要な手続きを円滑に進めることができます。
今からできるデジタル遺産対策
デジタル遺産対策は決して難しいものではありません。
まずは次の3つから始めてみましょう。
① 利用している金融機関やサービスを書き出す
② スマートフォンやパソコンの管理方法を整理する
③ エンディングノートに記録する
重要なのは、家族が「どこを確認すればよいのか」を把握できる状態にしておくことです。
まとめ
相続対策というと不動産や預貯金に目が向きがちですが、デジタル化が進んだ現在では「デジタル遺産」の整理も欠かせません。
スマートフォン、ネット銀行、証券口座、サブスク契約、SNSなどは、家族が把握していなければ発見できないこともあります。
元気なうちに情報を整理し、家族が困らないよう準備しておくことが、円満な相続への第一歩といえるでしょう。
FPからのワンポイントアドバイス
■ パスワードそのものを書くより「手がかり」を残しましょう
エンディングノートにIDやパスワードを直接記載すると、紛失や盗難のリスクがあります。
そのため、
・利用している金融機関やサービス名
・契約している証券会社名
・パスワード管理アプリの利用有無
・重要書類の保管場所
などをパスワード保管できるエンディングノートソフト等に記録しておく方法がおすすめです。
相続は「財産を残すこと」だけでなく、「家族が困らないように準備すること」でもあります。デジタル遺産の整理は、今から始められる身近な終活の一つといえるでしょう。
川崎 恵子 2026年07月10日

