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家庭経済の耳より情報

2013年02月10日

今最も進化を遂げるETF(上場投資信託)の最新情報(下)

 現在では、インデックスは世界で1万種類以上に増え、ETFもそれに伴って種類が非常に増えてきて、投資家もこの点に注意する必要が出てきました。
今回は、その中でも取引が急速に増えていて、仕組みが比較的複雑なETFを幾つか取り上げたいと思います。

この処、値動きが株価指数より大きくなったり、反対になったりする新しいタイプのETFが上場しています。

「日経平均レバレッジ連動型」は、例えば日経平均株価が1%上がると2倍の2%値上がりし、逆に日経平均が1%下がると、2倍の2%値下がりします。このETFは昨年4月12日に大証に上場し、初日の終値は4,355円でしたが、8月10日終値で3,725円と14.5%も値下がりしました。同期間の日経平均の下落率が6.6%ですから、ほぼ倍の下落率となります。
株価が上がると見込む投資家が購入し、予想通りに相場が上昇すると、指数の倍の値上がり益を手に入れることが出来ますが、反面、相場が下がると値下がりも大きくなるタイプです。

「TOPIXブル2倍」も同じ仕組みで、TOPIXの2倍の値動きをします。ただ、「日経平均レバレッジ」は取引単位が1口なのに対し「TOPIXブル2倍」は10口単位です。

この様なレバレッジ型はより大きな値動きを求める投資家にとっては魅力的で、短期的な株価の上昇局面をとらえ、活用するプロの投資家は多くいると考えられます。

また、日経平均が下(上)がると価格が上(下)がる大証の日経平均インバース型ETFも急増しています。
今までも、信用取引で売る、あるいは株TOPIX価指数先物を売るなど、下落リスクをヘッジする方法はいくつかありました。しかし、インバース型のETFは、他の上場株式と同じように売買できる点が個人にとって魅力的です。新たに信用取引の口座を開設するなどの手続きが不要で、個人投資家にとっては手軽なヘッジ手段の一つになるといえます。

ただし、レバレッジ型とインバース型の価格は指数2倍など逆の方向に完璧に動くわけではありません。その仕組み上、日々ズレが生じるのが避けられず、長期に保有すると日々の誤差が積み重なって増幅され、狙った値動きからのズレが大きくなることもあり、長期保有には向かない面もあります。

 2010年に大証に上場したVIX短期先物指数連動型ETFは、株価の下値不安が強まると上昇し易い米VIX指数と連動していて、投資家のヘッジ目的の売買が増えてきています。

更に、日経平均が下落した時に、コール・オプションを使って値下がりリスクを軽減する「カバードコール戦略」を用いたETFも登場しています。「カバードコール戦略」はオプションを利用した代表的な投資手法のひとつで、短期的に原資産(個別株や株価指数など)が大きく変動しないと予測される時に、原資産を買うと同時に、そのコール・オプションを売ることで、オプションのプレミアム分だけパフォーマンスを底上げする手法です。値下がりリスクを受取りプレミアム分だけ軽減できる一方で、原資産価格が予想より大きく上昇した場合は、収益が限定される側面も持ち合わせています。

この様に、個別株の選択でリスクを取りたくないが、指数の変動で利益を得たい個人投資家のニーズが高まってきて、すでに韓国などアジア市場ではこの様な新しいETFが主役になってきています。

また、昨年、海外市場ではこれまでのインデックス型ETFに加えて、アクティブ型ETFも新たに3本登場しました。

一方で、この様な複雑化するETFに対し、国際通貨基金(IMF)や国際通貨基金(BIS)は「市場や金融システムの混乱を引き起こしかねない」と警鐘を鳴らしました。
そして、金融安定理事会(FSB)も「新種のETFの複雑さや透明性の低さによって、新たなリスクが生まれる可能性がる」と警告を鳴らしています。

 一般の投資家は、分かり易い日経平均やTOPIXなどの代表的な指数に連動するETFを検討する方が無難かもしれません。

土井 健司  2013年02月10日