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家庭経済の耳より情報

2015年04月10日

年金に影響!~「マクロ経済スライド」発動~

 今年4月、本格的に「マクロ経済スライド」が発動されました。これにより、リタイア後の収入の柱である年金の給付額が影響を受けます。
そもそも「マクロ経済スライド」って何でしょう?また、年金への影響とはどんなことでしょうか?

 年金給付は通常の場合、賃金や物価の伸びに応じて増えていきますが、日本は少子高齢社会に向かっています。
そこで、「公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の変化」と「平均余命の伸びに伴う年金給付の増加」というマクロでみた年金給付と負担の変動に応じて、年金の給付水準を自動的に調整するしくみである「マクロ経済スライド」が導入されたのです。

「マクロ経済スライド」を行う期間は2025年まで、スライド調整率は0.9%(※)が見込まれています。

(※) 公的年金被保険者数の減少率0.6%+平均余命の伸び率を勘案した一定率0.3%=0.9%

 賃金・物価の上昇率が1.5%であれば、年金額の改定率は0.6%(1.5%-0.9%)になるわけです。
では、賃金・物価の上昇率が0.5%だとすれば、年金額の改定率は-0.4%(0.5%-0.9%)になるのでしょうか。
実はこの場合、改定が行われず、前年度と同じ年金額となります。
また、賃金・物価が上昇せず下がった場合は、スライド調整が適用されず、この下落分が引き下げられます。つまり、賃金・物価の下落率が-0.3%であれば、年金額の改定率も-0.3%になるわけです。

出所:厚生労働省HP「マクロ経済スライドってなに?」より

出所:厚生労働省HP「マクロ経済スライドってなに?」より

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 今年4月分からの年金については、賃金・物価上昇率が2.3%であったため、スライド調整が適用され、年金額の改定率は1.4%(2.3%-0.9%)と計算されますが、さらに過去の物価下落期に年金給付額を据え置いたことなどによる特例水準の段階的な解消分0.5%が差し引かれるので、年金額の改定率は0.9%となります。
具体的な年金額は以下の表のとおりとなります。

出所:厚生労働省HP「プレスリリース 平成27 年度の年金額改定について」より

出所:厚生労働省HP「プレスリリース 平成27 年度の年金額改定について」より

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 気を付けておかなければならないのは、年金額は増えるように見えるのですが、実質で考えるとどうなのか、ということです。
物価が2.3%上がっているのに、年金額は0.9%しか上がらない、つまり年金額の価値は目減りすることになってしまいます。
この年金の実質金額の減少は、リタイア後の生活にかなり響くのではないでしょうか。

 また、賃金・物価が下落した場合にも、スライド調整を適用するという案もありました。
現行では、前出の例のように賃金・物価の下落率が-0.3%であれば、年金額の改定率も-0.3%というものですが、これにも0.9%のスライド調整を行い、年金額の改定率を-1.2%(-0.3%-0.9%)にするという案なのですが、これはどうも見送られる模様です。
ただ、今後の年金改正の動向には注意が必要ですね。

吉田 美砂緒 2015年04月10日