家庭経済の耳寄り情報

2025年05月25日

60歳からでも年金を増やせる。国民年金の任意加入制度の活用について

この4月に還暦を迎えた友人から、定年後のライフプラン相談が受けました。勤めていた会社から雇用延長の誘いもあったそうですが、会社にしがみつく生き方はしたくないと、個人事業主として活動を始める意思決定をしたようです。
共働きで、よほどの贅沢をしなければ家計に問題はなく、自宅マンションのローンも完済できる見込み。年金の繰下げ受給も必要ないことが確認でき、友人も少しほっとした様子。せっかくなのでと、何歳から年金を受給するべきかに話が広がりました。

そこで確認したのが保険料の納付月。現在、国民年金は20歳〜60歳までの40年=480ヶ月間、保険料の納付が義務付けられていますが、平成3年3月までは20歳以上であっても、大学生や専門学校生は国民年金への加入は任意となっていたために、保険料を納付していない、つまり年金が満額受給できない方が多いのです。

後日ねんきんネットで調べてもらうと、4月生まれの友人はちょうど3年間分=36ヶ月間が未納になっていました。そこで国民年金の任意加入を提案しました。
任意加入制度は、60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合などで年金額の増額を希望するときは、60歳以降でも国民年金に加入できるものです。
念のため、加入の条件は以下の通りになります。(日本年金機構ホームページより)

1.日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
※日本国籍を有しない方で、在留資格が「特定活動(医療滞在または医療滞在者の付添人)」や「特定活動(観光・保養等を目的とする長期滞在または長期滞在者の同行配偶者)」で滞在する方を除く
2.老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
3.20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の方
4.厚生年金保険、共済組合等に加入していない方

友人にとってのメリットは、年金額の増額(満額受給)が可能になることに加えて
1)社会保険料納付分の税額控除が受けられる
2)任意加入する期間は、加入しているiDeCo(個人型確定拠出年金)の積み立て継続が可能
で、iDeCoの積立を継続することで、さらに年金受給額を増やすことができます。
もちろん、iDeCoの掛金は税額控除の対象になります。

幸い、個人事業主として仕事による収入の見込みが立っていたので、任意加入の手続きを進めることになりました。ちなみに任意加入して480ヶ月納付(保険料 令和7年度1ヶ月あたり17,510円を3年間納付)できた場合に、年間でおよそ6万円の増額になる見込み。さらにiDeCoの積立も継続することを検討しているようです。

何歳から年金を受給するべきか現時点で結論は出ていませんが、個人事業主として新たなチャレンジを選択する一方で、ライフプランの変化に備える意思決定ができたことに喜んでくれました。

60歳以降も定年延長など継続で働かれる方で、厚生年金に加入されている方は任意加入できませんが、引き続きiDeCoの加入は可能です。自分の場合どうするのが良いのか、お金のプロフェッショナルであるファイナンシャルプランナーへご相談されてはいかがでしょうか。

長尾 孝士 2025年05月25日