家庭経済の耳寄り情報

2023年01月25日

変動金利型住宅ローンを選んで大丈夫か!

 夢のマイホームの実現のため資金確保の手段として、住宅ローンを活用する方は、かなり多いです。
 変動型住宅ローンは、固定金利型(全期間)住宅ローン金利より低いので利用される方は全体の73.9%(2022年4月住宅金融支援機構調査)と多いです。また、メガバンク3行で平均約84%の利用です(2022年6月時点、日経記事)。過去20年あまり、日本経済は低迷し続け大幅な金利の引き上げはありませんでした。今までは、変動金利型住宅ローンの選択は、正しかったとも言えるかもしれません。

 しかし、今後35年(最長の返済期間)、日本経済は変化せず長期低迷状態でいくのでしょうか。予測はできません。ロシアのウクライナ侵攻、世界的インフレ圧力、急激な円安などで原材料、食料、エネルギー等の高騰が始まっています。物価はコストプッシュ型で上昇し、消費需要の増加によるものではないとされています。
 賃金の上昇が物価を上回る状態は、一部大企業のみの話で中小企業に波及は難しいとされています。そういう意味では、景気停滞はしばらく続くと思われますし、日銀が大規模金融緩和政策の維持を継続(2023/1/18)するのは、当然とも言えましょう。

 したがって、長期金利(10年国債利回り)のゆがみの調整はあったとしても(長期固定金利は上昇しました)、しばらくは、全般的な金利の上昇はないでしょう。変動金利型住宅ローンの金利は短期プライムレートに1%上乗せし基準金利(店頭金利)としています。短期金利マイナス0.1%の日銀のマイナス金利政策は維持されるということです。固定金利型は10年物国債利回り(上限0.5%まで)に準拠していますので大きく金利が大きく上がることは考えにくいでしょう。
 日銀の総裁交代後に政策変化があるかは、わかりませんが、賃金が上がり、物価も上昇し景気が回復されていくようなことがあれば、金利は3%、4%くらいまで上がっても不思議ではありません。

 変動金利型住宅ローンについて、金利が上昇した場合のリスクは、ぜひご理解していただきたく思います。

変動金利型 元利均等返済の場合(元金均等返済の選択は少数派です。)
 借入額3,000万円、35年返済、
 金利
 当初1年間  0.775%
 以降1年間  3.000%
 以降1年間  4.000%
 残り31年間  4.500%  

毎月の返済額(パソコンにて計算)
 当初5年間      月 81,576円
 6 ~10年目 4.5%  月101,197円
 11~15年目 4.5%  月127,462円
 16~20年目 4.5%  月159.327円
 21年目以降 4.5%  月189,918円
 こんな月の返済できますか?

5年ルール(返済額が5年間変わらず)

返済額の内訳 支払う利息の割合返済に回る元本の割合
 返済回数1回 金利0.775% 元本62,201 利息19,375 残29,937,799
    13回 金利2.000% 元本32,825 利息48,751 残29,218,100
 元本は半分以下、利息は倍以上になっている!
 返済回数1回の利息計算 3,000万円×0.775%÷12=19,375

② 返済額の内訳 支払う利息全部返済に回る元本なし
金利4%になり、③へ移行

③ とうとう未払利息発生!
4年目返済回数37回 金利4% 返済額81,576は変わらず
  元本 0  利息 81,576  残28,738,505・・・A
利息の計算 A×4%÷12=95,795 返すべき利息・・・B
未払利息 B-A=14,219
返済額は、すべて利息に支払われ、未払利息は累積されていきます。
当然、借入金への元金返済は全く行われず、未払利息の累積によりさらに返済すべきお金が増えます。

1.25倍ルール(5年ごとに返済額の見直し、大幅に金利が上っても返済額は1.25倍まで)

④ 安心か!!返済額、今までの返済額の1.25倍以内!
 6年目で残債と金利を見直し再計算します。
 
当初金利は、0.775%が6年目には、4.5%になっています。
 残2874万円30年返済4.5%で試算すると約146,000・・・A
      従来の返済額81,576×1.25=101,970・・・B
 本来ならば、A146,000円の月の返済をしないと最終的に完済できません。

返済額は増えないか! 1.25×1.25=1.56倍(11年目)の可能性はないか!
金利は5年目以降、4.5%です。当初5年81,576円から11年目に127,462円に返済額は増えています。まさに1.56倍になっています。21年目には189,918円となっています。とても返済などできないと思います。

⑥ 最悪、最終日に多額の残債・利息が残らないか!
1.25倍ルールにより、A-B=44,030円月の負担が減りますが、元本の返済がうまくなされずに、最悪、最終返済日に多額の残債や利息を一括で支払うことになるかもしれません。


あくまでもシミュレーションです。将来はわかりません。どういうリスクがあるかを充分ご理解いただきたく思います。想定外という言葉がはやったことを覚えていますか!
 住宅ローン破綻は、もう視野に入っています。それでもわずかな利益(変動と固定の金利差)のために変動金利型住宅ローンを選び、ほぼ全財産をかける勝負をしますか?
是非とも、大事な夢のマイホームを少しでも安全・安心に維持していただきたく思います。

佐藤 博明 2023年01月25日