家庭経済の耳寄り情報

2019年02月10日

生命保険会社が長生きの恩恵を還元

 生命保険会社は「人生100年時代」と言われる長生きの恩恵を受けて2018年4月以降、新規契約者に対して保険料の引き下げで応じ、既存契約者には増配で還元する姿勢を打ち出しました。

生命保険会社の本業の利益は
「利差益:予定利率」(想定した運用益と実際の運用益の差)
「費差益:予定事業費率」(想定費用と実際費用の差)
「死差益:予定死亡率」(想定した死亡保険金の支払額と実際の死亡保険金支払額の差)
で構成されています。

 上記3つの差益のうち、平均寿命が伸びた結果、最も利益が大きいのは「死差益」であり、2017年3月期の大手生命保険会社4社の基礎利益は1兆9,000億円の70%を占めています。
高めに想定した死亡率に基づく保険料収入と実際の死亡率の同収入との差が大きくなり、この差を是正するために、保険料設定の基準となる「標準生命表」が11年ぶりに改定され、2018年4月以降適用されています。

例えば、
40歳男性の死亡率が「1,000人に1.48人(2007年)」から「1,000人に1.18人」
40歳女性の死亡率が「1,000人に0.98人(2007年)」から「1,000人に0.88人」
にそれぞれ引き下げられました。

 今般の生命保険会社の保険料引き下げと増配は、金融庁がかねてより生命保険会社に対して死差益を還元するように求めてきたことが背景にあります。
死差益は生命保険会社の利益の根幹であり、経営の安定性に直結しています。

 金融庁が、長寿化を契機として生命保険会社に健全性維持と利用者への利益還元とのバランスをとった経営を求めてきている、と思われます。

佐藤 博信 2019年02月10日